最高裁判所第一小法廷 昭和26(あ)4900 決定
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人菅原昌人の上告趣意について。
論旨引用の判例は、心神喪失なりとの鑑定書の存するに拘わらず、裁判所が証人
及び被告人の供述により、心神耗弱に過ぎないと認定した場合に関するもので、論
旨の主張するように「精神状態の判断は常に専門家の鑑定を基礎と為」すべきであ
る旨を判示したものではない。しかも当裁判所の判例によれば、犯行当時における
犯人の精神状態の判断をなすについても、必ずしも常に専門家の鑑定に俟つことを
要するものではないとせられているのである。(昭和二二年(れ)三一七号、同二
三年七月六日第三小法廷判決、判例集二巻八号七八五頁以下参照)。原判決は第一
審第二回公判調書中証人Aの供述記載、及びBの検事に対する第一回供述調書の記
載を綜合して「被告人が本件犯行当時酒に酔つてはいたが、その程度が心神耗弱の
域にいたつていなかつたこと」を認定しているのでありこの認定はその挙示する証
拠に照らし肯認することができる。されば原判決には所論のような判例違反は勿論
単なる訴訟法違反も存立しないのである。論旨は採用に値しない。なお本件では刑
訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて刑訴四一四条、三八六条一項三号により主文のとおり決定する。
この決定は裁判官全員一致の意見である。
昭和二七年六月五日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 岩 松 三 郎
裁判官 沢 田 竹 治 郎
裁判官 真 野 毅
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裁判官 斎 藤 悠 輔
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